飛ぶ

2008年8月28日
五時に仕事を終えて「まだ時間あるし、どうしようかな」とおもっていたら、春子さんがぶどうをくれた。自分であらってお皿にのせる。ティッシュをテーブルにひいて準備万端。水滴のついたぶどうは、あまくて、とてもおいしかった。

 よるのはじめ、事務所をでるともう雨は降っていなくて安心した。自転車をこぎながら、すこしだけわくわくして、どんな人がいるんだろうとおもった。

 駐輪場の灯りが、暗い緑やコンクリート色の地面をうすめていて、セミの声なんかも、ずいぶんちいさくなったような気がした。鍵をかけて、ゆるやかな斜面とみじかい階段をのぼって、ガタガタと音をたてる自動ドアをくぐると、古い建物の匂いがした。なかには、白髪のおばさんがいて、「見学をしたいとおもって。」というと、愛想よく窓口に案内してくれた。
 見学の手続きをしていると、髪を黒く染めたおばあちゃんがちょうど来たので、教室まで一緒にいった。階段をのぼりながら「わたしらの年代の人がおおいんだけどね」とおばあちゃんがいった。「あ、そうだったんだ」とおもった。

 教室には、ほんとうに、おじいちゃんとおばあちゃんしかいなかった。

「シルバー世代のサークルだよ」と、おじいちゃん先生がおしえてくれた。静かな教室に誰かの調べた電子辞書から、自動音声で読み上げられる「lonely」や「equally」が響いた。

 そのあとは、2時間。喋ったり、リスニングしたり、かんたんなゲームしたり。おもったより、ずっとたのしかった。あんなふうに、たくさんのおばあちゃんやおじいちゃんと英語で話したことなかったとおもう。山のぼりが趣味のおばあさんが、「この前の登山で会ったチベットの青年に英語で返信したいんだ。」といっていたのが、印象にのこった。

 帰り際も、何人かのおじいちゃんとおばあちゃんにレベルも合わないみたいだし、別のところ探してみたらどうだろね。といわれたので、もうちょっと探してみようかなぁとおもった。でも、なんだか、あのゆるゆるな雰囲気の、おじいちゃんおばあちゃんサークルもいいなぁとおもう。

 雨がふってきた。

『10cc - I’m Not In Love』
http://jp.youtube.com/watch?v=xTYrjtgU-44

ちょうど33年前、僕がいま尊敬している人は、自分とあまり変わらないくらいの年齢だったのだとおもうと、ちょっと不思議な気分だ。桜木花道が、俺が小学生のときから16歳のまんまで変わらない、みたいな気分。

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