ベビーカーを押すスピードで
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西暦2027年、人類に子どもが誕生しなくなり、世界は荒れ果てていた。英国のエネルギー省官僚のセオはある武装集団に拉致されるが、リーダーは元妻のジュリアン。彼女は1万ポンドと引き換えに検問を通過できる通行証がほしいと言う。彼女の目的は、ひとりの移民の少女を新しい社会を作る活動をしている「ヒューマン・プロジェクト」に届けること。しかし、そのグループには実態がなく、なおかつ、その少女は重大な秘密を抱えていた。
『ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』や『リトル・プリンセス』などのファンタジー色の濃い作品を手がけたと思ったら、このような骨太な作品も演出できるのだから、アルフォンソ・キュアロンの力量には舌を巻く。ミステリーの女王P.D.ジェイムスが手がけたSFを製作費120億円かけて映画化。長回しで緊張感を持続させたことでリアルな迫力に満ちた作品になった。決して娯楽作ではない、少子化の現代を思えば、未来への警報ともとれるメッセージを備えた力作だ。 主演セオ役はクライブ・オーウェン。ほかマイケル・ケイン、ジュリアン・ムーアがクライブを好サポートしているのも見逃せない。(斎藤香)

朝、ベビーカーを押す人をみた。

歩道の境目で立ち止まっていたので「どうしたんだろう」とおもったら、ちょうど深い段差があるところをゆっくり押し歩いているところだった。とても慎重に、神経質にみえるくらいゆっくりとベビーカーを押す姿がなんだか印象に残った。

僕は赤ん坊が苦手だ。なんだかどうしたらいいのかわからなくなる。皺くちゃな顔も、バランスを欠いたように見えるパーツも、かわいい、と素直におもえない。でも、歩道の境目でベビーカーの速度を落とす母親の気持ちはなんとなくわかる気がする。
大切だとおもうものを「大切にしたい」ってだけだとおもう。

今日は「トゥモローワールド(Children of Men)」を見た。
シニカルで絶望的でユーモアがあって、とても素晴らしい作品だとおもう。技術力も高いのに、技術には溺れてない。描写対象がぶれないし、内容が水増しされない。
きちんとした芯の部分に、いいたいことや描きたいことがあるからだとおもう。

この映画は、2027年の子供の生まれなくなった世界(イギリス)が舞台になっている。

世界は約19年の不妊期間のせいで荒廃している。イギリスは国境を封鎖、移民を排除する政策をたてて、不法な移民などは収容所などに隔離または強制退国している。政府は、自殺薬と抗うつ剤を配給しているにもかかわらず、朝のニュースで自殺薬のCMが流される世界である。

映画は、世界最年少の少年が死んだことを報せるニュースからはじまる。サインをねだったファンに唾を吐きかけたせいで殺されたのだ。

とまぁ、ここにあらすじを細かくあげつらっても見たくなくなるだけだよな。

個人的には、終盤8分以上の長回しが続くシーンがあるんだけど、そこが本当に素晴らしいとおもう。あの階段を降りて、外に出て行くシーンを描くために、そのために残酷な暴力描写があるといってもいいくらい。

ただ、この映画のいいところは、現実からは浮き足立ったヒューマニズムを掲揚するだけじゃない点だとおもう
あんなふうによわっちい存在をいとおしく、大切におもう気持ちを、誰に対しても持ち続けられたらいいのに、とおもった刹那、そんな夢想をかき消すような状況がまた目の前で繰り広げられるからだ。

監督があのシーンの最後に「再開される銃撃戦」を挿入したのは、たぶん、「人類みな兄弟」的なやさしさは、なかなか在り得がたいからだとおもう。世の中には、大切だと思っていた人間を殺す人もいるし、大切だと思う人やもののために、大切だとおもわない人を傷つけたり、殺したりする人もいるのだ。

ある人は、仲間じゃない人間を排除したりもする。
仲間以外は大切じゃない、というふうに考える人もいるからだ。

それでも、例えば、母親がベビーカーのスピードをゆるめる時のようなやさしさをなるべく長い期間、なるべく多くの人に対して持ち続けられたらいいのにとおもう。

なかなかむずかしいけどねぇ、世の中いろんな人がいるもんなぁ。
個人的には、レディオヘッドやキングクリムゾン、リバティンズやローリングストーンズ(このカバーはあんま好きじゃないけど)の曲が使われていて、すごいよかった。もちろんジョンレノンもね。

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